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神戸地方裁判所伊丹支部 平成6年(ワ)135号 判決

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求

被告は、原告に対して金五八七万五〇〇〇円及びこれに対する平成六年六月九日(本訴状送達の日の翌日)から完済まで年六分の割合による金員(遅延損害金)を支払え。

第二  事案の概要

一  本件の争点は、原告の二男が自家用自動車総合保険普通保険約款の運転者家族限定特約にいう記名被保険者の同居の親族に該当するか否かである。

二  争いのない事実

1  原告は、平成四年一一月被告との間で、次の内容の自家用自動車総合保険契約(以下「本件契約」という)を締結した。

(一) 被保険自動車 神戸三三ほ七一一(以下「本件車両」という)

(二) 担保種目及び保険金額

(1) 車両      八〇〇万円

(2) 対人賠償    無制限

(3) 自損事故 一五〇〇万円

(4) 対物賠償 一〇〇〇万円

(三) 特約条項

(1) 二六才未満不担保

(2) 限定運転者 原告及びその家族

(四) 保険期間

平成四年一一月二九日午後四時から平成五年一一月二九日午後四時まで

2  事故の発生

原告の二男中西昭友(以下「昭友」という)は、平成五年五月一日山口県防府東インターチェンジ付近において、他車との衝突を避けるためにガードレールに衝突する事故に遭遇し、ガードレールを破損するとともに、本件車両を大破させた。

三  原告の主張

本件車両の破損により、原告は、五八七万五〇〇〇円の損害を被った。昭友の住民票上の住所は原告と異なるが、生活の本拠地たる住所は原告と同じであるから、本件契約の約款にいう原告の同居の家族である。

第三  争点に対する判断

一  証拠(甲三、八、一〇、乙三、四、七、八ないし一一の各一、二、証人阿部一雅、原告)及び弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。

1  原告は、宝塚市清荒神一丁目三四〇番地所在の建物(以下「第一建物」という)を所有し、一階で乾物店を営み、二階を住居としていたが、昭和五七年頃、同売布三丁目一八番地に建物(以下「第二建物」という)を建築して住居とした。原告は、平成五年三月頃昭友の新居にあてるために第一建物の二階を改装した。

2  昭友は、平成四年五月五日渡辺保子(以下「保子」という)と結納を交わした。保子は、同年三月頃から宝塚市内にアパートを借りていたが、平成五年三月一七日第一建物に嫁入道具を搬入し、同年四月一二日住民票上の住所を郷里の山口県美祢市西厚保町本郷七七番地の二から第一建物の所在地(宝塚市清荒神一丁目一一番一号)に移した。

3  昭友は、同四月一八日保子と結婚式を挙げて翌日新婚旅行に行き、同月二八日旅行から帰り、同月三〇日婚姻の届出をするとともに、住民票上の住所を第二建物の所在地(宝塚市売布三丁目四番一五号)から第一建物の所在地に移した。

4  昭友は、同年五月一日保子の実家に行く途中、本件事故を起こしたが、同月六日宝塚市に帰り、同月七日住民票上の住所を第一建物の所在地から第二建物の所在地に移した。ところで、運転免許証上の住所は、第二建物の所在地であったが、交通事故証明書には、第一建物の所在地が記載された。

二  ところで、原告は、本件事故当時、昭友は同居の親族であると主張し、原告本人尋問の結果中において、昭友は、結婚後第一建物に居住する予定であったが、結婚式前はもとより、その後本件事故の日に至るまで第一建物に寝泊りしたことはなく、現在も第二建物に居住している旨供述する。

しかしながら、先に認定した、昭友の結婚式前に改装された第一建物に保子の荷物が搬入され、しかも、昭友や保子の住民票上の住所が第一建物へ移された事実に照らすと、原告の右供述は、不自然であって採用できない。

むしろ、前記認定の、保子の荷物の搬入、昭友や保子の住民票上の住所の移動の経過、交通事故証明書における住所の記載等の事実を総合すると、昭友は結婚を機に第二建物から第一建物へ生活の本拠を移し、身分的にも、経済的にも原告から独立したものと推認される。

そして、他に原告の主張を認めるに足りる証拠はない。

(裁判官 村岡泰行)

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